獣医師の就職先はどこ?卒業後の主な進路を紹介

Column

2024年5月1日

獣医師の就職先と言えば、動物病院なのではと考えている方も多いようです。しかしながら、獣医師の資格と知識を活かせるステージは幅広く、就職先もバラエティに富んでいます。では、実際、獣医師は卒業後にどのような進路に進んでいるのでしょうか。
今回は、獣医師の就職先について解説していきます。

獣医師の主な就職先


獣医関連学部で学び、獣医師免許を取得した学生は、卒業後にどのような場所に就職しているのでしょうか。獣医師の主な就職先をご紹介します。

動物病院
農林水産省が発表している「令和4年獣医師の届出状況」によると、約4万人の獣医師の内、個人経営の動物病院に就業している人の割合は、18,881人です。つまり、獣医師の約47%が、動物病院に勤務していることとなります。
動物病院には、犬や猫などの小動物の診療を中心とした動物病院と、家畜などの診療を対象とした産業動物病院に分けられます。産業動物病院で働く獣医師の割合は10%ほどになるため、9割近くの獣医師は小動物を対象とした病院で働いていることが分かります。
動物病院と一口に言ってもその規模はさまざまで、開業獣医師が1人で営むところから多くの獣医師が勤務する大規模な動物病院まであります。また、地域に根差した診療を行う動物病院のほか、高度な専門医療を提供する二次診療専門の動物病院もあり、その役割もさまざまです。

国家公務員
令和2 年に国家公務員として働いている獣医師の数は553人です。国家公務員の場合、農林水産省で働くケースと厚生労働省で働くケースがあります。農林水産省の場合は家畜伝染病の予防などに関連する業務、厚生労働省の場合は食品衛生や公衆衛生に関連する業務に従事します。
国家公務員になるためには、国家試験を受験し、合格する必要があります。国家公務員獣医師の募集枠はそれほど多くないため、国家公務員として働く獣医師の割合は全体の1.3%ほどとなっています。

地方公務員
都道府県や市区町村の地方公務員として働く獣医師もいます。公衆衛生や家畜衛生分野の業務に従事することとなり、本庁の勤務でのほか、食肉衛生検査所や保健所、動物愛護施設などに勤務します。
地方では、公務員獣医師の不足が続いている状況にあり、地方自治体によっては年齢条件などを緩和し、獣医師が就業しやすい体制を整えているところもあります。

水族館・動物園
獣医師の中には、水族館や動物園の獣医師として働いている人もいます。地方自治体が運営する水族館や動物園の場合は、公務員として勤務することになります。
水族館や動物園では、動物の診療だけでなく、動物の健康管理から体のメンテナンス、診療、治療など幅広い業務を行います。また、動物の出産時の立会いや亡くなった動物の死因調査も獣医師の仕事です。大小さまざまな種類の動物の治療を担当するため、働きながら学ぶことも多くなるでしょう。
また、水族館や動物園で働く獣医師は約300人であり、人気の職種ではありますが、募集は少なく、非常に狭き門となっています。

製薬会社
獣医師としての知識を活かし、製薬会社で勤務する人もいます。医薬品の有効性や安全性の確認試験などに従事する人のほか、動物用の医薬品の研究・開発に携わる人もいます。また、中には医薬品を使用する獣医師に向け、自社の医薬品についてのセミナーなどを担当するケースもあります。

民間企業
製薬会社のほかにもペットフードや家畜用の飼料を取り扱う会社、ペット保険を取り扱う会社、動物用の医療器具を販売・製造する会社などに就職して活躍している獣医師もいます。

進学(大学院)
大学で6年間学んだあとに、さらに研究を深めるため大学院に進学する人もいます。獣医関連学部の場合、修士課程はなく、直接博士課程に進むこととなり修業年数は4年間です。

獣医師として働くために必要な心構えとは?


獣医師の就職先はさまざまです。しかしながら、どのような場所での仕事であっても獣医師として、次の心構えは忘れないようにしましょう。

常に新しい知識や技術を学ぶ姿勢を
動物病院で臨床獣医師として働く場合も、公務員獣医師として働く場合も、常に新しい知識や技術を学ぶ姿勢を忘れないようにしましょう。動物医療の技術は日々進歩しており、新たな治療技術や治療薬が開発されています。また、新しい感染症が流行することもあり、常に新しい情報を身に付ける姿勢は、獣医師として仕事をするうえで大切なものです。

コミュニケーションを大切にする
動物は言葉を話すことができません。その代わりにペットであれば飼い主、動物園や水族館であれば飼育員などから状況を詳しく聞き取る必要があります。また、臨床獣医師だけでなく、公務員であっても、民間企業であっても人の話をよく聞き、自分の意見を分かりやすく伝えることは、全ての仕事において重要になります。

獣医師としての誇りをもって業務に励む
動物病院や動物園・水族館などでは、直接動物と関わり、動物の健康を守る仕事に就きます。しかし、公務員や民間企業で獣医師に求められる業務も直接的、間接的に動物の健康や人の安全な生活を守る仕事です。どのような仕事に就く場合でも、獣医師に求められている社会的役割の重要性や社会の期待を忘れることなく、獣医師としての誇りを忘れずに業務に励むようにしましょう。



まとめ

獣医師の就職先は、動物病院や国家公務員、地方公務員、動物園・水族館、民間企業と多岐にわたります。就職先が変われば業務内容も変わってきますが、獣医師としての資格と知識を活かす仕事に就く限り、動物の健康や人の安全な生活を守る重要な仕事を任されることに変わりはありません。常に新しい情報や技術を学ぶ姿勢を忘れずに、周囲とのコミュニケーションを大切にしながら、獣医師としての誇りを忘れずに仕事に邁進しましょう。

この記事の監修者

高野 航平

大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。