獣医師の離職率はどれくらい?退職理由や防止策を解説
Column
2023年6月5日
実は、獣医師は離職率が高い職種です。なぜ、獣医師は高い専門性を必要とする職でありながら離職率が高いのでしょうか。
今回は、獣医師の退職理由をご紹介しながら、獣医師の離職率を低下させるための対策についてご説明します。
獣医師の離職率について
獣医師の離職率を把握するうえでは、新卒獣医師と女性獣医師の離職率の高さに注目する必要があります。
新卒獣医師の6割が1年目で離職
ある大学の調査によって、新卒で小動物病院に就職をした獣医師の60%以上が1年以内に離職しているという衝撃の実態が明らかになりました。獣医師に限らず、新卒の離職率が高まっていることが問題となっていますが、それでも厚労省のデータによると令和2年度における新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、大卒者の場合31.2%です。就職後1年以内と3年以内の調査であるため、就業期間に差がありますが、それでも新卒獣医師の離職率の高さには目を見張るものがあるでしょう。
20代〜30代の獣医師は女性が約半数を占める
獣医師のうち、20代~30代は女性が約半数を占めています。女性の場合、就職をしても結婚や出産、育児などとの両立が難しく、離職するケースが少なくありません。小規模な小動物病院の場合は、スタッフが少ないことから産休や育休を利用しにくい環境もあります。
獣医師の離職率が高い背景には、若い世代に女性の割合が多いこと、そして出産や育児などを理由に離職するケースが多いことが関係しています。
獣医師の離職率が高まる原因とは?
なぜ獣医師の離職率はこれほど高くなっているのでしょうか。離職率が高まる原因は次の通りです。
就職先とのミスマッチ
獣医学生が就職活動をする際は、希望する就業エリアの数か所の動物病院を訪問し、その中から就職先を選ぶケースが多くなっています。一般の大学生の就職活動のように、就職セミナーに参加し、何箇所も企業を訪問して企業研究をしたりといった就職活動をしている獣医学生は多くはありません。もちろん、忙しいためにそのような就職活動が実現できないという事情もあるでしょう。
現在の獣医学生は、獣医師が担当する業務の内容や動物病院の方針、勤務の実態などを深く企業研究することなく、雰囲気のよさそうな場所や条件のよさそうなところに就職してしまっているのが現状です。そのため、実際に働いてみたら思っていたような場所ではなかったというミスマッチが生じ、早期の離職につながっていると考えられます。
人間関係での悩み
職場での人間関係に悩み、退職をする獣医師も少なくありません。個人の動物病院では院長の考えが動物病院の方針になるため、その方針と自分の考えが合わず退職に至るケースもあります。
また、一緒に働くスタッフとの人間関係がうまくいかず、離職する獣医師もいます。動物病院の場合、一般企業のように部署が移動になるケースはほとんどありません。そのため、毎日のように顔を合わせる院長や同僚との関係性が良好でなければ、出勤することも苦痛になってしまうのです。
獣医師の離職を防ぐためにできること
獣医師の離職率が高い理由をご紹介してきました。では、どのような対策を講じれば獣医師の離職を防げるのでしょうか。動物病院が実施できる獣医師の離職防止策をご紹介します。
業務効率化を図る
獣医師は残業が多く休みが少ない場合もあります。業務内容の明確化や、電子カルテや予約管理システムなどを導入すると、業務効率が改善し、労働時間を短縮できる可能性があります。
待遇の見直し
忙しいのに給与が低いという待遇面の不満から離職をする獣医師もいます。担当する業務内容や業務量に比べて給与が低い場合は、待遇の見直しも検討すべきです。基本給のアップが難しい場合は、賞与に上乗せしたり、繁忙期に特別手当を支給したりといった方法があります。待遇の見直しは、自身の仕事ぶりが評価されたものとも受け止められるため、獣医師のモチベーションアップにもつながる可能性があるでしょう。
話し合いの場を設ける
人間関係に問題がある場合は、それぞれの意見を率直に言い合える話し合いの場を設けてみましょう。不満があってもそれを吐き出す場所がなければ、不満が募って退職に至る可能性が高くなります。また、どのような点に不満を感じているのかが分からなければ改善のしようもありません。
長く働き続けられるよりよい職場環境の構築を目指し、スタッフ同士が忌憚なく意見を言い合える場を設定しましょう。
まとめ
小動物病院で勤務する新卒獣医師の6割以上が1年以内に離職しているというデータがあります。獣医師の離職率を低下させるためには、獣医師自身も就職活動をする際にしっかりと就職先の状況と自分の希望する条件を見極め、ミスマッチの少ない就職をする必要があります。同時に動物病院側も、獣医師の労働環境や待遇面を見直すなど、働きやすい職場環境を作っていくことが必要になるといえるでしょう。
この記事の監修者
大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。