女性の働き方のご紹介vol.13
女性獣医師ネットワーク代表理事 箱崎 加奈子 先生

Column

2021年7月29日

Q.現在のお仕事を教えてください

「アニマルクリニックまりも」を2店舗経営管理しています。 2店舗とも診療施設を併設したトリミングサロンをメインとしたお店です。 診療は勤務獣医師が行っているのですが、 現在は獣医師募集中で私自身が週に5日で大原店、 方南町店の診察を行っています。
自分が子供の保育園の送り迎えなどがあるため、 予約診療制で診療時間はl0時~16時。
診療内容も予防診療、 未病ケアがメインです。
開業当初はこの病院は私が診療をメインに行い19時までの診療体制でした。 臨床医をずっとしていたいという気持ちもあったのですが子供を出産することになり、 それは難しいなと感じたので経営者になって人を雇うことにしたんです。
臨床獣医師は飼い主さんと接する仕事なのでやりがいもあるし、 スキルアップもできる魅力のある仕事です、 現在は経営者として勤務獣医師さんやスタッフさんにそういう環境を作っていきたいなと思っています。

Q.トリミングをメインとした診療施設とは?

2店舗とも、 しっかりとしたトリマーさんに任せているのでトリミングに定期的に訪れる飼い主さんが多くいらっしゃいます。 そこでトリミングと一緒に健診をおこなっているので、 定期的に耳や皮膚、その他の健康状態のチェックなどができます。 お迎えの時にその他の心配事をうかがったり、 こ相談も受けられます。
かかりつけ病院をがある飼い主さんでも、 症状が重くならないと適院しないこともあるのですが、その点トリミングのついでに診療ができることは、 軽症の時に早期発見できるためメリットを感じています。
この病院は短い診療時間なので、 予防診療でいらっしゃる飼い主さんは他にかかりつけの病院があることもありますし、 大原店から徒歩20分の提携病院である主人の病院に行く場合もあります。そのように使いわけてもらうことは効率がいいことだと思います。

Q.女性獣医師さんをメインスタッフにしていることについて

現在、 こ自身でも開業をされている女性の獣医師さんと小さいお子さんがいて育児中の女性の獣医師さんに勤めてもらっています。お子さんがいる先生は臨床経験もある方ですが、 お子さんが小さいため長い時間の診療は難しいのですが、 当院は16時で診療終了の病院なので、 その点は勤めやすいと思います。
お子さんの体調不良や家庭のことで診療に出られない場合もありますが、 私が予備人員としてヘルプをしてこのような事態ではフォローをしていきたいと思っています。 でも今は、 私も現場に出ているので、 主人の病院から獣医師さんをヘルプに回して もらったり、 人繰りがつかない時は病院自体を休診にしてしまうこともあります。
女性は家庭の事情で勤務時間の変更や急な休みはどうしても必要ですよね。 自分もそうなので、 今後もそのような事情に柔軟に対応できるようにしていきたいです。
多面的にネットワークがあるという点は飼い主さんも安心ですし、 勤めている先生も人のフォローの点などで安心できると思います。

Q.勤務には臨床経験は必要ですか?

新卒の先生でも大丈夫です。 いい意味でも悪い意味でもレントゲンのような診断設備がないので、 検査が必要な症例は歩い て20分ぐらいの提携病院で検査、 診断、 治療指針を出してもらえます。 予防診療ばかりでもなく、 この店舗はそろそろlO年目なので高齢犬の診療も多いです。 勤務する方のやり方によっては、 深い診療もきちんとできると思います。
こういった形態の病院はあまり知られていないのですが、 このように診療の住み分けがうまくできることで女性に多い時短での仕事、 またはブランクでの仕事復帰などがうまくいくと思います。

Q.女性獣医師ネットワークについて

このネットワークは、現在は女性獣医師の働き方などのコミュニティの一つとして活用してもらってますが、もともとは当院のホームページの求人コンテンツだったんです。この病院を開業した当初は、夜19時までの診療時間で私が診療をしていたのですが、子供を授かったことで誰か代わりの獣医師さんが必要になりました。
その時にコンサルタントのアドバイスで、「予防診療メインの診療をしてくれる病院に勤務する獣医師さんはなかなか探すのは難しいけれども、あなたと同じようにお子さんを持っているような境遇の方だったら勤めてくれるのでは?」というアドバイスで求人ツールの一つとして始めたことなんです。
けれども、同じような境遇の方が見つかっても適勤が遠いなどの理由も多く、なかなかこれを求人のツールとして使うことは難しいことがわかりました。今ではこのネットワークに女性獣医師として色々な方がメンバーとして入ってくれているので、こ経験をロールモデルとして共有してもらったり、交流会を定期的に行ったり、メンバー同士で同じような意志や悩みを持っている人がそれぞれ交流をもってくれたりしているのでそのように女性の働き方を応援するネットワークに変化してきています。

Q.育児との両立はどう解決していますか?

私の場合、優先順位を決定しているから、わかりやすいです。現在は家族が一番と決めてしまっているので、勤務時間を短くしていますし、子供の具合が悪い時は、他の人に代わってもらいます。子供は急な熱を出したりしますが、主人の病院を含めて3病院のネットワークがあるので、そのネットワークを頼りにしていますね。
もし、育児中やブランクがあって働きにくいと思っている方でも、働きたいならできない理由を並べて働かないより、自分次第で働くところは沢山あると思います。両立をうまくやっている方をみていると本人次第のようです。自分がどのように働けるか、何ができるかなどアピールをしていくことが大事です。

message 女性獣医師さんへのメッセージ

獣医師は資格の仕事なので、資格が利用できる居場所をみつけてほしいと思いますね。
動物の医療という現場は大変な部分もあるので、勤務時問や給料面の兼ね合いで、いい待遇の獣医師資格が必要ない仕事にうつる方もいらっしゃいますが、今は資格が利用できる働き方は探せば沢山あると思いますし、まだまだ増やせるはずです。
「動物の病気を治す医療」というところで仕事内容を決めてしまうとその場所は少ないかもしれないですが、「予防」や「ペットの飼い主さんのサポート」というような仕事は多くあり、その分野では獣医師資格ほど信頼性のある資格は他にはないはずなんです。そういった部分にプライドや自信をもって働いてほしいですね。