女性の働き方のご紹介vol.16
博士(獣医学) 神田 聡子 先生

Column

2021年7月29日

Q.現在のお仕事をとそのやりがいを教えてください

Vet Derm Tokyo(以下、VDT : https://www.vdt.co.jp/)は、獣医皮膚科・耳科を専門とし、皮膚科診療や学術活動を行う獣医師チームです。全国に約40の提携病院があり、契約動物病院での皮膚科の出張診療や遠隔画像診療などのサービスを提供しています。
私はVDTの一員として今は週に3回ほど出張診療を行っています。その他にも、獣医療雑誌依頼の執筆などのデスクワーク、セミナーの依頼があれば講師などの業務もあります。
今、私が定期的に出張診療の担当をしている病院は12病院で、その病院の皮膚科診療の悩みを解消してあげられるように実際に診療をしています。診療時間は病院によっても違うのですが、基本的には6時間になります。
この仕事のやりがいは、ペットの皮膚疾患で悩んでいた飼い主さんが、治療していい状態になったことを喜んでくれることや、また、診療に関して悩んでいる獣医さんに皮膚科の知識や技術を伝えることで悩みを解消してあげられることですね。

Q.皮膚科の診療をメインにしたいと思ったきっかけは?

大学を卒業したときは、皮膚科認定医を目指そうなんて全く思っていませんでした(笑)。卒業してからは4年半、勤務医として一般診療をしていました。
その時に勤務していた病院の提案で週に一回、二次診療施設で皮膚科を学ぶ機会を得ました。その後、その研修から人の縁にも恵まれ、皮膚病をより深く勉強
したいと思うようになり、博士課程に進み博士号を取得しました。その後、現場で働くことを考え、皮膚科認定医の資格も取得しました。
今の診療スタイルになってから実感したのですが、現場では現在の獣医皮膚科におけるグローバルスタンダードの治療法が知られていない・実践されていないことが多いです。例えば、細菌性毛包炎や表在性拡大性膿皮症に対する治療ガイドラインでは、抗生剤の経口投与は第ー選択の治療法ではなく、無計画な抗生物質の投与が薬剤耐性菌を増加させていることが証明されています。
しかし、過去の経験則で薬用シャンプーを中心としたシャンプー療法よりも、抗生物質の経口投与が行われていることが少なくありません。こういった情報がまだまだ知られていないので、臨床の現場で主さんと臨床医の先生の両方に私の知識を還元できればと思って診療の仕事に特に力をいれています。

Q.育児との両立で大変なことはありますか?

時間の使い方が今と子供がいなかった時とではまったく違いますね。
子供がいなかった時は自分の時間が自由になったので、執筆やスライド作成などのデスクワークは夜中にやったりしていましたが、今、その時間帯で仕事をすると日常生活に支障がでてしまうので夜中の作業は控えています。勤務の内容も診療をメインにして、執筆とかセミナーの仕事はボリュームを落として、頼れるチームの他の獣医師にお願いするようにしています。
VDT所属の獣医師4人のうち、3人が女性なのですが、現在育児をしているのは私だけです。今後のために私が育児との両立できる勤務形態の基礎的なものを作っていければいいなと思っています。
女性は育児以外にも介護など家庭の事情によって勤務形態を変えなくてはいけないことも多いと思うので、仕事から離れずすむ選択肢が選べるように様々な働き方を提案できるようになりたいです。
また、子供が生まれた時に主人と相談して、私が週3日勤務し、主人が週4日勤務するように働き方を変えました。交代で育児をすることで二人とも子供のことを把握するようになり、初めは大変でしたが、今は何か問題があれば、夫婦2人で考えられるのでこのスタイルでよかったと感じています。

message 女性獣医師さんへのメッセージ

個人的には育児や診療がある今の自分の環境を言い訳にせず、 論文を書いたり皮膚科学という部分に学術的な貢献ができればいいなと思っています。 また、別の方面では、 獣医業界が働きやすい業界になるように何かお手伝いできればなと思っています。 現状、 臨床医をしている先生達は仕事が大変で疲弊している方が多い気がするので。

Q.今後やりたいことは

臨床現場の勤務医さん達をみると楽しんで仕事をしている方が少ないような気がしています。 頑張りすぎて、 身体を壊してしまっている方も少なくないので、 すべてを頑張りすぎなくてよいと思います。
本来、 動物が好きでこの仕事を目指したと思うので、 自分がやりたい仕事ができる場所を探究してください。