獣医師が開業すると年収は上がる?開業資金はどのくらい必要?

Column

2022年12月19日

動物病院に勤務し、臨床獣医師として働いている方の中には、いつかは独立して開業したいと考えている方が多いのではないでしょうか。動物病院を開業すれば、自分が理想とする動物医療を提供できるようになるとともに、勤務獣医師として働いていた時よりも高い年収を得られる可能性も出てきます。
動物病院の開業を目指す獣医師の方にとって、開業すれば年収がどのくらいになるのか、開業するにはどのくらいの資金が必要になるのかは気になるところではないでしょうか。
そこで今回は、獣医師が独立開業した場合の年収や開業に必要な資金についてご説明します。

開業した獣医師の年収は、600万円~800万円程度

動物病院を独立開業した獣医師の平均的な年収は、おおよそ600万円~800万円程度だといわれています。獣医師の平均年収であるとされている592.1万円と比較すると、獣医師が動物病院を開業した場合は勤務獣医師の時よりも年収をアップさせられることがわかります。
動物病院の経営が軌道に乗れば、ほかの場所に分院をオープンさせたり、トリミングサロンやペットホテルなどを開業したりといった多角経営をすることによって、さらに高い年収を得ることも不可能ではありません。

動物病院開業のための資金は3,000万円以上!?

動物病院を開業するためには、資金が必要です。開業にかかる資金は、どこで開業するか、どの程度の規模の動物病院とするか、どの程度までの治療が可能な設備を導入するかによって変わってきますが、開業時に必要な資金の目安は一般的に、3,000万円~4,000万円程度だとされています。
資金の内訳は次のとおりです。

  • ・動物病院の場所を借りるための費用(不動産費用) 200万円~300万円
  • ・医療機器や医療器具の導入費用 1,000万円~1,500万円
  • ・内装や外装のリフォーム費用 1,000万円~2,000万円
  • ・什器や備品の購入 200万円~300万円
  • ・チラシの作成、ホームページの立ち上げ等の広告宣伝費用 100万円~200万円
  • 開業資金を抑えるためには、家賃の安いテナントを選んだり、導入する設備を厳選したりする方法があります。しかし、家賃が低いことを優先した場合、通院に不便な立地にある場合や郊外であるにもかかわらず駐車場がないようなテナントの場合は、来院する患者の数を増やすことは難しいでしょう。また、高額な医療設備の導入を見送り、最低限の設備で診療を行う場合は、十分な治療を提供できない可能性があり、治療設備が整ったライバル病院に患者が奪われてしまうリスクもあります。開業資金にどれだけの費用をかけるのかは、費用対効果も考え、慎重に検討するようにしましょう。

    開業時の資金調達法と獣医師の年収の関係

    開業資金には3,000万円以上が必要になることをご紹介しましたが、3,000万円をすべて自己資金で用意する獣医師はほとんどおらず、多くの場合は金融機関から資金を借り入れています。
    借入金は毎月の動物病院の売り上げの中から返済をしていくことになるため、借入金が残っているうちは売り上げのうち利益として残る額は少なくなります。しかし、動物病院の経営が安定し、借入金を返済し終えたあとは支出を減らせるため、病院の利益も上がり、獣医師の年収もより高くできると期待できます。

    動物病院の開業を成功させるために必要なこととは

    動物病院を開業する際には、獣医師としての治療技術と知識も必要ですが、経営者として病院を安定的に経営していくための知識、動物病院で働くスタッフを管理するマネジメントするスキルも必要になってきます。
    また、患者やその家族に「またこの病院に通いたい」と思ってもらうためには、患者が安心して来院できる病院の雰囲気づくりも大切です。動物の治療は人間のように健康保険が適用されず、病院によって治療費が異なります。そのため、現在の病状と必要になる治療についてわかりやすい説明を行い、患者の家族が納得できる金額を提示できるかどうかも重要になります。
    かかりつけの病院として通ってくれる患者がいなければ、病院の売り上げも伸ばせず、年収も上げることはできません。患者から信頼され、続けて通ってくれる動物病院であるためには、治療技術だけでなく、患者・家族への気配りなども大切になってくるのです。

    独立開業の前に経営ノウハウを身につけられる方法も


    動物病院を開業すれば、勤務獣医師として働いていた時よりも年収を上げることができます。しかし、院長となれば自分が目指す動物病院を作り上げることができるものの、診療の業務だけでなく、患者を集めるための集客やスタッフの採用や教育、医療材料や医薬品の発注や管理など、さまざまな業務も発生し、何より病院を安定的に経営するための経営手腕も問われることになります。
    したがって動物病院を開業するにあたっては、獣医師としての治療技術だけでなく経営者としての経営ノウハウも身に着けておく必要があります。動物病院の中には、獣医師の独立支援を行っているところもあります。開業したからと言って必ずしも成功を収めるわけではありません。できるだけ失敗のリスクを減らすためには、すぐに開業するのではなく、そのような動物病院に転職し、経営のノウハウを学んだあとで独立することも考えてみてはいかがでしょうか。

    この記事の監修者

    高野 航平

    大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
    ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。