獣医師の国家資格合格は難しい?難易度やスケジュールを紹介

Column

2023年5月22日

獣医師を目指すのであれば避けては通れないのが、獣医師国家資格試験に合格することです。獣医師の国家試験はどのくらい難しいのでしょうか。
今回は、獣医師の国家試験の難易度やスケジュールについて解説します。

獣医師の国家資格の合格率はどれくらい?

農林水産省では、毎年、獣医師国家試験の結果を発表しています。2022年度の試験の合格率は69.9%です。ただし、過去5年の合格率を見ると合格率は80%以上となっています。
参照:農林水産省「第74回獣医師国家試験の結果(過去5年間及び大学別)」https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/tikusui/attach/pdf/230314-3.pdf

一般的な医師の合格率と比較
獣医師と医師の国家試験はどちらが難しいのかと比べられるケースがあります。出題範囲が異なるために一概にどちらの試験の方が難しいということはできないでしょう。厚生労働省によると、医師国家試験の2022年度の合格率は91.6%となっています。合格率だけを比較すれば、医師よりも獣医師の国家資格の方が合格率は低いことが分かります。
参照:厚生労働省「第117回医師国家試験の合格発表について」https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2023/siken01/about.html

獣医師の国家試験が難しいと言われている理由

獣医師の国家試験は、難易度が高いと言われています。それは、次に紹介する3つの理由によるものです。

1.国家試験の出題範囲が広い
獣医師国家試験の問題は獣医倫理や動物福祉に関するものから、関係法規に関するもの、薬理作用や検査診断に関するもの、公衆衛生や食品衛生に関するもの、感染症や中毒、各器官の疾患に関するものなど、非常に広い範囲から出題されます。幅広い知識が必要になる点は、獣医師の国家試験の難易度の高さを示していると言えるでしょう。

2.国家試験の勉強期間が3カ月程度しかない
国家試験は毎年2月に実施されます。獣医師の国家試験の受験資格は、大学で獣医学を修めて卒業した者または卒業が見込まれる者となります。大学を卒業するためには、卒業論文を完成させなければなりません。多くの大学では、卒業論文の発表と審査が10月から11月に行われており、卒業論文発表後からでないと国家試験に向けた勉強に時間を割けないという現実があります。国家試験が2月であるため、勉強に費やせる時間は3ヶ月程度しかないのです。短期間に膨大な出題範囲の勉強をしなければならないことも、獣医師国家試験の難しさにつながっていると考えられます。

3.他の国家試験に比べて問題集が少ない
獣医師国家試験は、医師や看護師、歯科医師などの国家試験と比べて、発行されている国家試験対策の問題集が少ないと言えます。獣医師の国家試験対策用の問題集が少ないことも、勉強のしにくさにつながっています。

獣医師の国家試験|内容・スケジュール・費用など

獣医師国家試験の内容やスケジュール、受験費用などをご紹介します。

出題内容や問題構成
獣医師の国家試験の出題は、「獣医療の基本的事項」「獣医学の基本的事項」「衛生学に関する事項」「獣医学の臨床的事項」の4つのカテゴリに分けられています。4つのカテゴリの中から出題される必須問題が50問、学説試験A・学説問題Bがそれぞれ80問、「衛生学に関する事項」「獣医学の臨床的事項」の中から出題される実地試験C・Dが60問、合計330問を2日に渡って受験するようになります。

合格に必要な基準
必須問題の正答率が70%以上、学説試験A・B、実地試験C・Dの合計正答率が60%以上であることが合格基準となっています。ただし、受験する年によって基準が変わる可能性もあります。

試験スケジュールや場所
試験は毎年2月に開催されています。試験を受けられる場所は、北海道、東京、福岡の3か所です。

試験費用
受験手数料は13,900円です。(2022年度の場合)
受験手数料の額に相当する収入印紙を受験願書に貼付して納付します。

試験の合格発表日
その年によって合格発表日は前後しますが、2022年度は2023年3月14日午前10時に農林水産省のホームページに受験番号が掲載されました。

獣医師の国家試験に合格するためのコツ

国家試験に合格するためには、効率よく勉強を進めることが大切です。獣医師国家試験に合格するためのコツをご紹介します。


1.過去問に繰り返し取り組む
過去問は、出題の傾向を知るうえで非常に重要です。特に、獣医師国家試験は問題集が少ないため、過去問を繰り返し解いて、必要な知識を体系的に理解するようにしましょう。

2.計画を立てて勉強をする
前述したように、獣医師国家試験の出題範囲は広く、勉強できる期間が限られています。初めにしっかりと計画を立てて勉強をしないと、試験日までに勉強が終わらなくなってしまいます。

3.体調管理を怠らない
体調を崩してしまうと、勉強も予定通りに進まなくなります。勉強に集中することも大切ですが、睡眠不足になったり、食生活が乱れると体調を崩す可能性があります。体調管理も怠らないように注意しましょう。

獣医師の国家試験に不合格だとどうなる?

獣医師の国家試験に合格できなければ、獣医師と働くことはできません。不合格だった場合には、翌年の国家試験の合格を目指すか、獣医師としての仕事を諦めて別の職種に就くことになります。

不合格にならないよう国家試験対策を欠かさずに
獣医師の国家試験の合格率は、例年は80%超となっています。しかし2022年度のように合格率が69.9%まで落ちる可能性もあります。限られた時間の中で広い範囲を勉強しなければならないため、国家試験合格のための勉強は非常に大変です。しかしながら、試験に合格できなければ6年間大学で学んだことを活かし、獣医師としての仕事に就くことができないのです。合格を目指し、しっかりと計画を立てて体調を管理しながら、試験対策を欠かさないようにしましょう。

まとめ

獣医師国家試験は、出題範囲が広く、勉強できる期間も短いことから非常に難しくなっています。合格率は例年80%超となっていますが、2022年度は70%を下回っており、今後、どのような傾向になるのかはまだ分かりません。獣医師を目指して大学に入学したのであれば国家試験に合格し、夢であった獣医師の仕事に就けるように、しっかりと国家試験に向けた勉強の計画を立て、万全の態勢で試験に臨めるようにしましょう。

この記事の監修者

高野 航平

大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。