獣医師が動物病院を開業する流れ!必要資金や平均年齢の目安も解説

Column

2023年5月19日

「いつかは開業して自分の理想とする動物病院を作りたい」と考えている獣医師の方も少なくないのではないでしょうか。しかし、開業の手順や開業に必要な資金の目安が分からない方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、獣医師が動物病院を開業する際の手順と開業時に必要となる資金の目安などについてご説明します。

獣医師が動物病院を開業する流れ

ではまず、動物病院開業にあたっての具体的な手順をご紹介します。

1.動物病院のコンセプトを設計する
はじめに、どのような動物病院を作りたいのか、開業するうえで目指したい方向性を明確にします。開業する動物病院のコンセプトによって、病院の規模や採用すべきスタッフの数、導入する設備なども変わってくるでしょう。そのため、最初の時点でコンセプトを明確に定めることは開業を成功させるうえで非常に重要になります。

2.開業時期や予算を決定し、開業エリアを検討する
次に、開業する時期を決定し、開業するエリアの候補も絞りましょう。また、開業資金はどのくらいの額にするのか、予算も決定します。

3.周辺調査を行い、エリアを決定する
開業するエリアを絞り込んだらそのエリアの人口や住民の属性、近隣の同業者の状況などを細かく調べましょう。人口の少ないエリアやペットを飼っている人が少ない地域では集客は難しくなります。また、評判の良い動物病院が近くにある場合や、多くの動物病院がすでに開業しているエリアも、集客に苦労する可能性があるでしょう。慎重にエリアの状況を調査したうえで、開業するエリアを決定します。

4.事業計画書を作成し、資金を調達する
開業にあたり、金融機関から融資を受ける場合には、事業計画書を提出しなければなりません。事業計画書は、どこでどのような事業を行うために、どのくらいの費用が必要で、どのくらいの収益が見込めるかといった具体的な計画を示した書類です。金融機関は事業計画書の内容をもとに、返済が可能かどうかを見極め、融資を行います。事業計画書を作成したら、金融機関に融資の申し込みをし、資金を調達します。

5.土地や物件を選定する
動物病院を建てるときには、開業する土地を選びます。テナントを借りる際には、希望の条件に合った物件を選定します。

6.動物病院の設計や施工をし、内装・設備を整える
動物病院を建築する際には建物や駐車場の設計をして、工事を進め、テナントを借りる場合も内装を整えます。また、必要な什器や医療機器を導入して、診療ができる状態に整えていきます。

7.必要書類を届け出る
個人事業主として開業する場合には開業届を税務署に提出します。法人を設立する場合は必要事項を決定し、定款や登記書類を作成して法務局に登記申請を行います。また、診療施設開設届や動物取扱業届出書など、動物病院の開業時に必要な書類の届出をします。

8.スタッフの採用、宣伝活動の開始
受付や診療時の助手など、動物病院の運営に必要なスタッフを募集し、採用をします。また、開業したことを周囲に通知するためにホームページやSNS、チラシなどを使って宣伝活動を開始します。

獣医師が動物病院を開業するメリットとは?

獣医師が動物病院を開業する主なメリットを3つご紹介します。

1.働きやすい環境を実現できる
自分が院長となるため、動物病院の診療時間や休日なども自分の判断で決定できます。勤務獣医師として働くよりも働きやすい環境を整えられるでしょう。

2.収入が上がる可能性がある
勤務獣医師の場合は基本給が決まっているため、どんなに忙しくても残業代が増える以外、給与が大幅に増えることはありません。しかし、開業した場合は動物病院の収益が自身の収入につながるため、頑張り次第で収入を上げられる可能性があります。

3.方針やスタッフを自分で決定できる
勤務獣医師の場合は、自分の考えと勤務する病院の経営方針が合わない場合も病院の方針に従わざるを得ないでしょう。しかし、開業すれば、自分が理想とする動物病院の実現に向け、経営方針はもちろん、一緒に働くスタッフの採用も自分で決定できるようになります。

獣医師が動物病院を開業するデメリット

動物病院を開業すると、上に紹介したようなメリットを得られます。しかしながら、次のようなデメリットがある点もしっかりと理解しておくことが大切です。

1.赤字になる可能性もある
開業時には多額の資金が必要になるため、動物病院を開業しても集客ができずに思ったような収益が上がらない場合、赤字になってしまう可能性もあります。

2.集客や採用活動に時間がかかる場合も
宣伝活動が思うように効果を発揮せず、はじめはなかなか集客できない場合もあります。また、採用活動を行ってもなかなか理想とする人材からの応募がなく、開業日に間に合わなくなってしまうケースもあるでしょう。

3.経営や財務などの管理をしなければいけない
開業するということは、動物病院の経営責任を負うことにもなります。院長としての業務だけでなく、財務面の管理など、経営者としての業務も必要になります。

獣医師が動物病院を開業する平均年齢や資金の目安

獣医師は、何歳くらいに開業する人が多いのでしょうか。獣医師が動物病院を開業する際の年齢や開業時の資金の目安についてご説明します。

開業時の平均年齢は30歳〜40歳
大学卒業後にすぐに開業する人は少なく、勤務獣医師として経験と技術を身に付けたうえで、30歳~40歳あたりに開業する人が多いようです。

開業資金の目安は約3,000万円
動物病院には、高額な医療機器の導入が必要となるため、開業資金の目安は3,000万円程度になるでしょう。ある程度の頭金を自己資金として準備し、不足分については金融機関から融資を受けて開業をするケースがほとんどです。

開業獣医師の平均年収は500万〜1,000万円
動物病院を開業している獣医師の年収は、500万~1,000万円程度だと言われています。動物病院の収益は診療によって得る報酬であり、患者の数によって平均年収には差が生じます。

獣医師が動物病院の開業に失敗しないために

動物病院の開業は、自分の理想を実現できるものの、初期投資に多額の資金が必要になります。開業を成功させるためには、次の点に注意が必要です。

事前調査を念入りに行う
開業しても患者が来なければ、収益を上げられません。そのため、開業前に十分に集客が見込めるエリアであるかどうかを調べることが大切です。

自己資金を貯めておく
自己資金が少ない場合、開業資金のほとんどを金融機関から借り入れなければなりません。借入額が多くなればなるほど月々の返済負担は大きくなるため、自己資金が少ないと開業したばかりの時期は、資金繰りが苦しくなる可能性もあります。また、自己資金が多い方が有利な条件で融資を受けられるようになるのも事実です。開業を考えているのであれば、開業時期までに計画的に自己資金を貯めるようにしましょう。

専門家に相談する
勤務獣医師として働き、獣医師の経験を積んでも経営に関する知識や経験を身に付けるのは難しいはずです。動物病院の開業には多額の資金が必要であり、万が一、経営がうまくいかなかった場合には大きなリスクが生じます。開業時には、経営コンサルタントや動物病院開業を得意とする専門コンサルタントに相談すると安心です。

まとめ

獣医師が動物病院を開業する際の流れについてご説明しました。勤務獣医師と違い、開業すれば様々な面で自分の理想とする動物医療を提供する環境を実現できるようになります。しかしながら、開業にあたっては獣医師としての経験や知識だけでなく、経営者としての能力や知識も必要になります。動物病院の開業を成功させるためには、事前の調査をしっかりと行い、余裕をもって運営するためにある程度の自己資金を貯めておくと良いでしょう。また、動物病院の開業をサポートできる専門家への相談も検討することをおすすめします。

この記事の監修者

高野 航平

大学卒業後、一般動物病院にて小動物臨床を経験し、アニコムへ入社。
ペットの病気の早期発見・予防を目標に、記事監修や相談ダイヤルなどの啓発事業に携わる。愛猫 茶太郎と暮らしている。